デジタル戦略部 マーケティング戦略室
ビジネスアシスタントリーダー
デジタル戦略部 戦略企画グループ
ビジネスリーダー
デジタル戦略部 戦略企画グループ
ビジネスアシスタントリーダー
※紹介行員のインタビュー内容・所属等は取材当時のものになります
神奈川県内を主として25万社、500万人を超える顧客データをはじめ、銀行が保有する多種多様なデータから意味のある関連性や法則を導き出すデータサイエンスを駆使して、より機動的な商品プロモーションをおこなっているのがデジタル戦略部の戦略企画グループ(旧マーケティング戦略室)だ。
コンコルディア・フィナンシャルグループの経営理念である「地域にとってなくてはならない金融グループ」であり続けるために、データサイエンスの観点から日々お客さまの課題解決に取り組んでいる。
今回クローズアップしたプロジェクトは「商品プロモーションにおけるAIの活用」「次世代マーケティングプラットフォームの構築」「AIを活用した経営課題推計モデルの構築」の3つ。デジタル戦略部の特徴と人財育成も含めて、各チームのメンバーに語ってもらった。
勘と経験だけが頼りの商品プロモーションでは、お客さまの投資意欲や購買意欲を高め続けるのは難しい。そんな危機感からスタートしたデータサイエンスの活用は、今、金融機関の最大の強みである長期的な顧客データとAIを組み合わせてニーズを推定する段階に入っている。
「毎日蓄積される膨大な顧客データを営業店が活用しやすい形に加工し、効果的な使い方を提案する。チームを立ち上げて最初に取り組んだミッションを進めることと並行して、今は銀行の利用頻度やサービスの利用内容からお客さまのニーズを想像できる推定モデルを作り続けています。こういった推定をカードローンや教育ローンなど、特定の商品を知っていただくためにおこなうのではなく、“多くの選択肢の中からなぜお客さまは当行を選んだのか”という、本質的な疑問の答えを探すためにおこなっています。お客さまのわずかな特徴から推定するために、AIを活用しています」
これによって横浜銀行の商品プロモーションは大きく進化。その効果も高く、プロモーション開始から半年間で最大10倍にまで成約率が伸びた商品もあった。特筆すべきは、これまでプロモーションが難しいとされていた商品ほど、高い伸び率を記録していることだ。
「まだ非常に狭い範囲の推定しかおこなえておらず、最大10倍の成果も手放しで喜ぶことはできません。しかし、勘と経験のプロモーションから、データサイエンスによって再現性のあるプロモーションとなったのは画期的なこと。お客さまのニーズを、データとロジックによって推定すれば、お客さまにご満足いただける可能性を継続的に高めることができる。これは今、データサイエンスを学んでいる皆さんにとっても興味深い事例ではないかと思います」
目指すのは、お客さまの人生に寄り添ったプロモーション手法の確立。
「長期間の幅広いお取引に裏打ちされたデータを持つ横浜銀行なら不可能ではありません。まずはもっと選択肢を増やすところから始めていきたいですね」
その一歩を踏み出す日はそれほど遠くない。
「横浜銀行はこれまで、200を超える店舗を通じてお客さまとの信頼関係を築いてきました。しかし、近年は購買行動のデジタルシフトや新型コロナウィルス感染症による生活様式の変化によって、銀行の営業手法やマーケティングに今までにない変化が求められています。私たちはデータマーケティングによって顧客行動を理解し、一人ひとりのお客さまにあった情報提供・商品提案をおこなう必要があると考えました。そこでデジタルマーケティングチームでは、2020年から『Google Cloud』をベースにした次世代マーケティングプラットフォーム(CDP:Customer Data Platform)の構築を開始。銀行に蓄積されたお客さまの属性データ・取引データに加え、行動データを統合・分析し、お客さまのニーズを定量的に推定。スピーディにマーケティング施策に反映できるようにしました」
現在、横浜銀行では、この次世代マーケティングプラットフォームを利用し、個人ローンの提案活動で成果をあげている。
「行動データを分析できるようになり、成約率が高まりました。もちろん、ここがゴールではありません。現在は、成約率をさらに高めるべく『Google Cloud』の機能である「BigQuery ML」を使い、個人ローンの機械学習モデルの構築にも取り組んでいます。今後は個人ローンから横展開して提案商品を増やしていきたいですね。そして、いずれは法人のお客さまへの提案にも活用できるようにしたいと思っています」
人口減少や高齢化、生活様式の変化、社会のデジタル化。外部環境の急速な変化によって企業が抱える課題が多様化・高度化しているのを受け、2022年7月にスタートしたのが「AIを活用した経営課題推計モデルの構築」。横浜銀行が保有するビッグデータと、業界情報や経済指標等の外部環境データをAIに学習・分析させて、法人のお客さまの経営課題を明らかにするプロジェクトだ。
「横浜銀行はさまざまなソリューションを開発することによって法人のお客さまの多種多様なニーズにお応えしていますが、真のニーズを正確につかんで最適な提案をするのは容易ではありません。このプロジェクトの目的は、そんなケースで役立つヒントを与えること。私を含め、本プロジェクトに関わっている担当者は、法人渉外経験者。データサイエンスだけではなく、営業店で培った経験と知識を存分に投入しています」
経営課題推計モデルの初期モデル構築は2022年12月。運用開始は2023年4月を予定している。プロジェクトの流れとしては、一定規模以上の企業を抽出し、各戦略ソリューションにおけるニーズをスコアリング。推定される経営課題を可視化し、営業店担当者が事前に情報を把握することで、コンサルティング営業の高度化につなげる。
AIを使って、企業の経営課題をスコアリングするのは、地方銀行初の試み。
「半年から1年くらいは試行錯誤が続くと思いますが、営業店担当者の意見を聞き、エリア特性なども踏まえながら最適化をはかっていきたいと思います。資金需要や事業承継、脱炭素への取り組み、資本増強など、企業が抱えるあらゆる課題を可視化できるように取り組んでいきます」
デジタル戦略部では一人ひとりが自ら横浜銀行全体の業務における課題を見つけ、データサイエンスを駆使して解決に導いていくプロジェクトを立ちあげる。そして関連部門や外部のベンダーと連携しながら主体的に進めていく。そのため人財育成には力を入れており、本年度は本部専門コースで入行した新卒者向けの育成プログラムをスタート。データ分析力だけではなく、他部門との連携に必要なビジネス力も短期間で習得できるよう工夫している。
「横浜銀行は、1997年よりマーケティング用データベースを稼働させており、データ分析に関し理解ある経営層、行員が多い。高度かつ多様になるデータ分析ニーズを受けて、昨年より本部にてキャリアをスタートする専門コースを創設。一期生となった2022年入行の新入行員には、1年間の研修、OJTを通じて、金融商品の特性や基礎的なデータ分析業務を学んでもらいました。2年目以降は、実際に課題を抱えている部署やデータ分析によって業務が大きく変わる可能性がある部署での実務を通じて、ビジネス力や課題認識能力を身につけていただきます。さらなる専門的なスキルは、浜銀総合研究所が運営する『ナレッジ・ラボ』(ビッグデータ基盤の共同開発、マーケティングやリスク管理のモデル開発、ビッグデータ利活用の人財育成をおこなう専門組織)で高めていく予定です」
デジタル戦略部の成果により、行内では『データドリブン』(売上、マーケティング、WEB解析などのデータに基づいて判断・行動すること)への注目が高まっている。一方、あらたなデータ分析技術の発展、分野への適用、精度の向上と、データ分析業務には終わりがない。
「変化を楽しめる人、いろんなことに興味を持てる好奇心旺盛な人には合っている部門だと思います。本部専門コースの一期生は半数が文系出身。統計等への興味、理解があれば大学の専攻は不問です」